7月19日 京都府最低賃金審議会への意見書

京都地方最低賃金審議会

会長 久本 憲夫様

 

                    

 

最低賃金法25条5項にもとづき2012年の最低賃金決定に関する調査審議に関して意見を述べます。

 

■意見

(1)最低賃金を時給1000円以上とし、全国一律最賃制度とせよ。

 

(2)厚労省の生活保護基準の算定は低すぎる。以下の理由で述べる内容とせよ。

 

(3)実質的な審議が行われる小委員会をはじめ、全審議会を完全に公開せよ。

 

(4)京都地方最低賃金審議会で、ユニオンネットワーク・京都が意見表明をおこなうことを求める。

 

 

■理由について

 

(1)最低賃金を時給1000円以上とし、全国一律最賃制度とせよ。

 

①時給1000円以上とせよ、ということについて

 

ⅰ)京都府の751円という最低賃金はあまりに低すぎます。本年もまた同じことを述べることになりますが、普通の生活をすることを考えれば絶対額が低すぎます。

 現行の最低賃金額は「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上および事業の公正な競争に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」という「最低賃金法1条(目的)」を満足させるものではありません。

 後述するように最低賃金に影響されて働く労働者は、従来、考えられていたような、若年者、高齢者、短時間労働者だけではなくなっています。「家計の主たる担い手」の労働者、「世帯主男性労働者」なども増えてきています。これらの事を前提に京都府の最低賃金751円という金額を考える必要があります。

 

ⅱ)時給751円では月174時間働いても130,674円にしかなりません。厚生労働省が生活保護との比較で使っている可処分所得の算出のための税、社会保険を控除した22年度の比率である0、849をかけると約110,942円となり、家賃、水光熱代などを差し引けば、食べるのにかつかつ、餓死しない程度の賃金となることは疑いがないことです。病気などの不測の事態があればたちまち困窮する事態になります。このような賃金では他人を養うことは絶対に不可能、単身世帯すら維持できない賃金です。単身世帯の場合は万が一の時には家族などから何らかの支援があることを前提としなければならない賃金です。

時給751円のどこに「生活の安定」があるのでしょうか。どのようにして十分に休養し精神と肉体をリフレッシュし、人間関係を豊富にし、知識と教養を積み上げ、「労働力の質的向上」を図ることができるのでしょうか。

「公正な競争に資する」ことも全くできません。何故なら最低賃金に影響される低賃金労働者は大企業よりは中小零細企業に多く、そこで働く労働者は低賃金ゆえに「生活の安定」も「労働力の質的向上」も実現できず、結果として労働生産性が向上せず、競争力が弱体化します。また大企業が中小零細企業に対し最低賃金レベルの賃金しか支払えないような水準にまで製品価格を抑え込んでくることはよくある事態です。いつまでたっても中小零細企業の劣悪な賃金とそれがもたらす競争力の弱体化という悪循環にはまり込み優秀な労働力を確保することができないというハンデを構造的にもつことになります。これでは「公正な競争に資する」とはとても言えません。

 

ⅲ)国際比較ということからも日本の最低賃金は低すぎます。

周知のようにオランダ、ルクセンブルク、アイルランド、ベルギーなどは1000円台、イギリス、フランスでも800円台(2009年)です。またEUでは平均賃金の50%以下が「貧困」、60%以下が「低賃金」と定められ、当面、平均賃金の50%という最低賃金の目標が掲げられ、更に60%が目指されようとしています。このようにEUでは最低賃金が貧困の拡大に対する重要な政策と位置付けられ、それにふさわしい形で運用されています。日本でも同様の考え方を導入することも検討すべきです。

かつて使用者側は最低賃金が高いと国際競争に敗北し、結果として雇用が失われ、労働条件が低下すると主張してきました。最近は中国をはじめとするアジア諸国の低賃金労働者との競争に敗北すると言っていますが、これはおかしな論理です。多くの先進国では中国などの低賃金圧力に耐えながら、国内労働者に対しては日本より高い最低賃金を維持して国際競争に臨んでいるのです。日本だけがアジア諸国の「低賃金労働者」との競争を迫られているわけではありません。

 

ⅳ)前述したように最低賃金のレベルで給与が支給されているのは従来、パートタイマー、アルバイトなどの若年労働者、高齢の労働者など一部の労働者、業種的にはビルメンテナンス労働者、コンビニ店員、一部の飲食業などの労働者であると思われてきました。

 しかしトラックやタクシーなどで最低賃金の賃金レベルで、それどころか長時間労働ゆえに最低賃金すら下回って働いている労働者も多くなっています。すでに北海道などで最低賃金以下になっているタクシー労働者のケースがマスコミで報道されています。我々のタクシー労働者組織化の経験からも、賃金体系が最低賃金を基準にしている場合が大半です。その結果、年金をもらいながら、あるいは複合就労の一つの仕事としてタクシー労働者となっているケースも増えています。

 タクシーの場合、歩合制賃金体系が大半で、一定の売上高を積み上げなければ最低限の生活をする賃金すら支給されない、という仕組みから、残業指示をされなくとも自己判断でオーバーワークを行う事例も少なくありません。それを使用者が黙認することによって、労働者の過労死や脳・心疾患が多数生み出されています。長時間労働・過労が原因の事故も増加しています。このような中で、「タクシー運転者の改善基準告示」を守って働く乗務員は、総支給額で10万円以下という最低賃金以下の収入が常態化しています。まさに過労死か飢餓賃金かという究極の選択を強制されているのです。

それは歩合給における労働者の取り分が少ないという問題もありますが、規制緩和による台数増という、需給バランスの崩壊も大きな原因の一つです。需給バランスの崩壊と最低賃金の低さ、要するに社会的規制の緩和ということが長時間労働を生み出し、労働者の生活と安全を脅かしているのです。最低賃金の低さは経営者側の真剣な経営努力による利益の確保とそれによる労働条件改善を怠る根拠ともなっています。最低賃金を生活できる水準に引き上げ、長時間労働をなくすことが、タクシー業界を労働者が安全にかつ安心して働くことができる業界に改善することにつながるのです。

 

 トラック労働者でも二次、三次下請けの近距離(地場)の運転手の賃金レベルは、各地の最低賃金が基準になっているケースが多くあります。賃金は1日いくらという形で大雑把に約束されることが多く、1日、12時間労働が大体の基準です。休憩時間は無く、荷待ちの時に適当に車の中で休憩というのが業界の常識です。その場合、1日の賃金は、最低賃金を時給751円とするとそれを基準に、(751円×8時間)+(751円×1.25×4時間)=9,763円を前提に、9,800円とかキリのいい1万円とかに設定されます。しかし「実労働時間」という概念が労使ともども希薄なので、時間外労働や深夜労働が発生した場合、ほとんど計算されず、未払になるケースが多くあります。

12時間を超えた場合でも「1日いくらの約束」なので、そもそも労働者が請求しないということが多くあります。特に近距離運送は規制緩和により中小零細業者が増加して過当競争状態にあります。運賃は最低賃金を見据えて設定され、渋滞などで労働時間が伸びても会社に支払う余力はほとんどないということもあります。団体交渉で12時間分の運賃が労働者の賃金、賃金未払分が会社の利益と公言する使用者もいました。これは特別な事例ではありません。

 長距離でも二次、三次の下請けになると賃金体系は、「基本給」(最低賃金×174時間)+「固定残業、その他、残業賃金の計算基礎額に算入されないような手当類」(総計15万円~20万円)=35万円~40万円前後とされています。週末の金曜日の夜か、土曜日にしか自宅に戻らず、残り5日はトラックで過ごすというような長時間労働でも残業賃金が未払にならないように設定されています。固定残業部分は総支給額30万円から40万円前後の業界水準の差額との関係で設定されるケースが多いと思われます。

私たちの長距離トラック運転手の感覚では、「地場の運転手よりは手取りはいいが、日曜日の深夜に出かけ、家には土曜日に帰ってくる生活なので、食費が4,5万円はかかる。改善基準告示の拘束時間月293時間をはるかに超える拘束時間が実態なので、長距離運転手が地場の運転手より特に労働条件がいいとは思わない」というのが共通の意識です。

 トラックやタクシーなどの労働者の場合、「世帯主労働者」「家計の主たる担い手」の中高年男性労働者も多く、彼ら自身が自覚していないだけで息子や娘のアルバイトよりも低い時間給で働いていることも珍しくありません。運送業は日本社会にとってはなくてはならない基幹産業です。その基幹産業で働く労働者が健康や命の危険を冒しながら、更には重大事故に怯えながら、低賃金ゆえに家族のために長時間労働に耐えているのです。

 全国37の経営者協会が2012年6月19日に発表した「最低賃金近辺で働いている労働者の多くは家計補助的労働であり、世帯主の生活保護基準と比較するのは妥当ではない(最低賃金改定目安審議に関する要望書)」という認識は極めて一面的かつ危険な評価です。運輸産業という基幹産業ですら多くの労働者が最低賃金近辺で働いているのです。頻繁に報道される重大事故、4月の関越のバス事故などが発生する根拠は厳然と存在しています。

 現行の最低賃金はタクシーやトラックなどにとってこれ以上の賃金低下を阻止している側面はあると評価していますが、しかし現状のまま放置されれば長時間労働による社会的重大事故、労働者の命と健康を破壊し続けることになることも事実です。

 

ⅴ)低すぎる最低賃金は、単に労働者の生活が苦しいというレベルを超えて貧困の連鎖という問題を発生させます。いま日本では貧困の拡大が深刻です。低すぎる最低賃金は、それを促進します。低所得家庭の子供たちが教育や社会関係などで大きなハンデを持ち、親世代と同じ低賃金労働者へと連鎖していくことは多くの研究や出版物で明らかにされています。

 最低賃金は、憲法25条が保障する生存権保障の具体化である「国民最低生活保障・ナショナルミニマム」にとって、生活保護とならんで大きな基軸となる制度です。最低賃金だけで貧困と格差の拡大に対処ができるとは考えませんし、医療制度、教育、年金、様々な社会保障、福祉制度など体系的な政策体系で対処すべきであると考えます。しかしそのように考えるとき、働く労働者の最低賃金保障である最低賃金はそれらに大きな影響を与える基軸的な制度です。

最低賃金が低すぎて貧困と格差の拡大を推進、固定化していくものであってはなりません。しかし現行の751円は、現在の貧困と格差の拡大を有効に阻止していくものとはなりえていません。

これらを踏まえ最低賃金を時給1000円以上とすることを強く要求します。

 

②都市と地方の格差を拡大するランク制は廃止し全国一律最賃制度にしなければならないと考えています。

ⅰ)最低の645円の沖縄、高知、岩手と、最高の837円の東京では192円も差があり、月収にすれば約33400円の差があります。最低賃金に地域格差があっていいはずはありません。沖縄で働こうが北海道で働こうが、東京で働こうが、最低賃金レベルは同じというのが通常の感覚であろうと考えます。

何故なら労働は人間にとって重要な生命活動・社会活動であり、単に生活の糧をえるだけではなく、その人を社会と結合させていく重要な活動です。その重要な活動の最低の単価が地域によって異なってもいいというのは理解することができません。沖縄、岩手、高知であろうと東京であろうと1円は1円です。同じように人間にとって重要な価値を持つ労働の対価は全国一律でこれ以上低い賃金にしてはならないと定めるべきです。最低賃金はどの地方でどのような職種であろうと同じでなければならないと考えます。

 

ⅱ)格差の根拠については一般的には地方と都市の生活費や経済水準の違いなどが言われ、それを反映するものとして20の指標にもとづくランク制が採用され、23年の全員協議会でも概ね妥当と解され維持が確認されています。

しかしこのランク制度が、国民最低生活保障と深い関連を持つ最低賃金にふさわしい基準を示しているかは極めて疑問です。この指標は使用者の支払い能力を推定するには役立つかもしれませんが、国民最低生活保障という点では20項目のうち標準生計費の項目があるだけで、他は現状の「地方と都市」の格差を固定化するようなものばかりです。

地方と都市の生活費の違いという問題では住居費や食費などはあると考えますが、それを主張するなら、地方が構造的に抱える医療、教育、交通、などの重要な社会的インフラ、多様な文化へのアクセスの困難などを厳密に金額換算すべきです。これらは労働者が通常の生活を送るうえで必要なものであり、自らの労働力の価値を高めるためには必要不可欠の事柄です。都市と違って地方では乗用車を持たなければ生活できないというように交通一つをとっても大きな格差があります。これらの問題は全く考慮されていません。

現行のランク制を根拠づけている指標を使えば都市と地方の差は拡大するばかりです。現に格差は拡大し続けています。その格差と連動し最低が645円という絶対的な水準の低さは、地方経済を疲弊させることにも結果します。

現実に全国一律最賃制度にすれば、全国各地のパート、契約、アルバイトなどで働く多くの労働者の賃金は上がりますし、その影響で賃金水準が底上げされ、地方の活性化につながります。

 

ⅲ)国際的にみても全国一律最低賃金制度が常識です。ILOの2005年のデーターでは、地域別最賃を採用している国は9ヵ国で、中国やインドネシアなどの国土が大きく地域格差が大きい新興国か、カナダ、メキシコなどの連邦国家などです。日本の国土は狭く、それらの国ほどの大きな文化的、民族的違いがあるわけではありません。

 日本で全国一律最低賃金制を採用しない理由はなく、むしろ現行制度は東京一極集中に示される地方と都市の格差を拡大するという意味では、改善されるべき制度です。

 

ⅳ)全国一律最低賃金制度の実現の必要性は東日本大震災を経て、更に鮮明になっていると考えます。

 東日本大震災前から東北3県は最低賃金が低い地域でした。沖縄、高知と並んで岩手はDランクでも最低の645円、福島は658円、宮城だけがCランクで675円ですが、全国加重平均737円よりはるかに低い金額です。

 昨年は宮城では生活保護とのかい離が、厚生労働省の計算でも8円ありましたが、震災の打撃を口実に1円しかあがりませんでした。被災地では多くの労働者が職を失い、たまに仕事があっても低賃金、非正規というような場合が多数となっています。震災以降、賃金引き下げ圧力が強まっています。それには被災各県の最低賃金の低さが大きく影響しています。

 本年、大幅な最低賃金引き上げによる賃金の底上げがなければ生活の再建のために多額の資金がいる被災労働者は極めて困難な状況に陥ります。家が壊され、工場、港、農地が使えず、という状態の中で、あっても低賃金と非正規雇用しか仕事がない状態であれば、好むと好まざるとにかかわらず、被災地での生活再建を断念せざるをえない事態も生み出されてきます。

 被災地の最低賃金を上げるためには現行のランク制度では絶対に不可能です。昨年の宮城全労協が宮城労働局に提出した異議申出書では、「『口を開けば特区』といっているが、最低賃金を大幅に引き上げる『最賃特区』を何故、主張しないのか」という批判を述べています。被災地に切実な最低賃金引上げの声です。

これに対し、「被災地で期間を限って最低賃金の規制を緩めることも、政府は検討してはどうか。寄付金をもとに被災者を高齢者の買い物代行や清掃などに雇う動きがある。最低賃金の規制を柔軟にすれば、仕事に就く機会が広がる」(「雇用政策の手本を被災地で」日経新聞社説、2012年2月21日)という、怒りをおさえることができないような主張がおこなわれています。具体的な表現を避けてはいますが最低賃金以下の特例賃金のようなものを導入しようと目論んでいることは一目瞭然です。

こんなことをすれば最低賃金以下の賃金が燎原の火のように被災地に広がっていくでしょう。50兆円といわれる復興需要でうるおっているのは仙台市など一部であり、深刻な問題になっているのは「復興格差」です。「復興格差」に直面させられているのは、気仙沼、石巻、三陸など被災沿岸部で生産手段を奪われた農民、漁民、低賃金労働者、高齢被介護者、生活保護世帯、そして福島の原発被災者などです。これらの人々の生活を再建するためにこそ最低賃金を大幅に引き上げ、生活の展望を少しでも切り開き、勇気づける必要があります。

被災地の最低賃金の大幅な引上げのためには、全国一律最低賃金制度にすることが、一番良い方法であると考えます。東日本大震災の復興にむけた社会的絆の強化というなら、全国一律最低賃金制度導入は、社会的意味においても賃金を底上げするという意味でも大きな役割を果たすと考えます。

 それが不可能というのならば2010年の雇用戦略対話の「できるだけ早期に全国最低

800円にあげる」に基づき、「最低でも800円」にすることが必要です。

いずれにしても現在のランク分けの指標を使う限り、被災地の最低賃金は上がりようがなく、上がったとしても東京など都市との差が広がり、被災地で生活することの困難は解決されないと考えます。

 

ⅴ)以下は、昨年、宮城全労協が提出した意見書、異議申出書です。

★意見書

 「低すぎる最低賃金水準が重くのしかかり、大震災によって被災地の賃金を押し下げる構造にあります。被災地を励ます意味においても、今年度最賃審議が特別な位置にあることを認識され、大幅引き上げの実現に向けて審議を尽くすことを強く要請します」

 ★異議申出書

 「大震災からの『復旧・復興』はあまりにも遅く不十分であり、地震、津波、原発事故

の被災地では怒りと絶望が渦巻いています。『自殺・孤独死・関連死』により、連日、多くの人々の命が奪われています。このような現実に踏まえて審議がなされ、被災地と被災民衆が希望を見出しうる最低賃金の大幅な引き上げを答申されるよう要請し、意見とします」

 

 ⅵ)福島県議会、岩手県議会も以下のような意見書を提出しています。

 ★福島県議会 「福島県最低賃金の引上げと早期発効を求める意見書(平成24年3月16日)」

 

・・・・最低賃金の引き上げは、働く者のセーフティーネット機能を高めるとともに、労働意欲の向上、ひいては企業の業績向上へ寄与することにもつながり、あわせて福島県の復興・再生という観点から見た場合においても、県内の労働力の確保や労働人口の県外流出防止のために非常に重要なことである。・・・・

1、福島県の最低賃金を「雇用戦略対話」における政労使合意に沿った引き上げをはかること・・・

 

 同様の主旨の意見書が福島県下の福島市や郡山市などの自治体で採択されている。

 

★岩手県 「最低賃金改正等に関する意見書(平成24年7月9日)」

・・・・また本県では東日本大震災津波からの復旧・復興に懸命に取り組んでいるところであるが、一定水準の賃金の保障をはじめとした雇用環境がかくほされなければ、被災者の生活再建も地域の復興もすすまない。・・・・

・・・・平成24年度の最低賃金の改正にあたっては、雇用戦略対話の合意に基づき早期に800円を確保し、景気状況に配慮しつつ全国平均1000円に到達するよう尽力すること。・・・・・

 

 一読してわかるように被災地の労働者にとって最低賃金引き上げは切実な課題です。これらの被災地の声にこたえ、被災民衆が希望を見出しうるような大幅引き上げを実現するために、全国一律最低賃金制度を実現するように強く要求します。

 

③結論

 京都府の751円という最低賃金は低すぎ、最賃法一条に規定のある目的を実現するものにはなっていません。2006年の686円から2010年の749円までの4年間、63円の引き上げは、08年のリーマンショック以降の底知れない賃金低下に対する一定の歯止めにはなったとは考えます。しかし昨年は東日本大震災被害などを口実に、引き上げについては「生活保護との整合性」だけが問題とされ、少額の引き上げしか行われませんでした。このような状態が継続すると被災県に典型なように、最低賃金が以前よく言われた「低賃金の重し」というものに固定化されかねません。

 また低すぎる最低賃金は常に生活保護切り下げの圧力になっています。生活保護の切り下げは母子家庭、高齢者、介護生活者など社会的立場の弱い人々の生存を脅かします。生活保護世帯の収入では貧困の連鎖から抜け出せないことは各種の研究、資料などからも明らかです。これ以上の生活保護費の切り下げは貧困層を拡大させ社会を荒廃させることに結果しかねません。労働者の側からいえば低すぎる最低賃金はこのような社会的問題も孕んでおり、労働者、労働組合にとって最低賃金引き上げは重要な社会的責務であり、社会的弱者連帯の闘いでもあります。

 最低賃金制度を全国一律制度とすることは最低生活保障などとの整合性を強化し、体系的な貧困対策、格差対策に有効であり、「公正な競争に資する」ものであると考えます。被災県との社会的絆を主張するなら、とりわけそうです。

 最後に、最低賃金の引き上げは当然のことながら各種の中小企業支援策と結合して行われるべきであると考えます。日本商行会議所などは最低賃金引き上げに毎年、反対していますが、本来からいえば最低賃金が上がり、低賃金に対する歯止めがかかることは、中小企業経営にとって良質な労働力を育成、確保していくうえで有利なことであると考えます。

これらを踏まえ最低賃金制度を全国一律最低賃金制度とし時給1000円以上とすることを要求します。それが不可能ならば2010年の政労使合意を踏まえ全国最低800円を実現すべきです。すでに800円以上、もしくは800円に近い最賃が適用されている都道府県については、他の道府県の引き上げ額の加重平均と同程度の引き上げ額を目安とすべきであると考えます。

 

(2)厚労省の生活保護基準の算定は低すぎる。以下の理由で述べる内容とせよ。

 

①2007年の最賃法改正では、9条3項に「生活保護にかかる施策との整合性」が挿入されました。そこで、2008年度の地域別最賃の目安の決定にあたり、生活保護基準と最低賃金の比較方法が議論となりました。翌年からは、比較方法の議論は行われていませんが、もう一度法改正の趣旨に立ち返って議論をやり直すべきです。

平成20年7月1日に出された厚生労働省の施行通達では、9条3項の趣旨について「生活保護に係る施策との整合性は、各地方最低賃金審議会における審議にあたって考慮すべき3つの考慮要素のうち生計費にかかるものであるから、条文上は、生活保護に係る施策との整合性に配慮すると規定しているところであるが、法律上、特に生活保護に係る施策との整合性だけが明確化された点にかんがみれば、これは、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨であると解される」としています。

しかし、現在の比較方法は以下のように生活保護基準を低く、最低賃金を高く試算する

ものとなっており、「生活保護基準を下回らない水準となるよう配慮する」との改正法の趣旨とは異なっています。

 

②最低賃金額の計算に当って、労働時間を法定労働時間173.8時間として計算していますが、一般労働者の平均的な所定内実労働時間は150時間(毎月勤労統計調査)であり、この所定内実労働時間を採用するべきです。法定労働時間を採用することにより生活保護との整合性、生活保護基準を下回らない最低賃金額が低く設定されることになります。

 

③生活保護では各都道府県を複数の級地に分け、生活扶助費を決めています。しかし、中央賃金審議会の「目安」が採用したのは、都道府県ごとに人口加重平均をとる方法です。

 この方法では、生活費の高い県庁所在地などの生活保護費よりも低い算定がされます。このため、生活保護基準を最賃が上回っているとされている県においても、県庁所在地などでは最低賃金のほうが低くなります。

生活保護については都道府県ごとの人口加重平均ではなく、県庁所在地などの最も高い級地の生活保護基準を採用すべきであり、人口加重平均を採用することによって生活保護基準を低く算定すべきではありません。

 

④生活保護費の中の住宅扶助について「目安」は、決められた特別基準額ではなく、生活保護を受給している人が実際に支払った家賃の平均である「実績値」が採用されています。

 生活保護の運用においては様々な形で基準額以内の安い物件に住むことを指導されるほか、特別に配慮された公営住宅への入居も含めて、一般的な労働者が通常、探しうる賃貸物件よりもはるかに低いものとなっています。住宅扶助の「実績値」採用によって、生活保護を低く算定すべきではありません。

 

⑤生活保護法は、稼働世帯に対して、就労に伴う経費の増加を、非稼働世帯の生活保護に上乗せする「勤労控除」という方法で実質的な均衡を図っています。もし、この額を補填しなければ、働きに出ることによって実質的な生活水準が低下してしまうからです。「目安」ではこの勤労控除が全く考慮されておらず、結果的に生活保護基準を低く算定しています。

 

⑥「生活保護との整合性、下回らない水準」については様々な困難性がありますが、現行の算出方法は可能な限り、最低賃金を低く抑える方向で処理されていると言わざるをえません。

 

(3)実質的な審議が行われる小委員会をはじめ、全審議会を完全に公開せよ

 

最賃審議会の審議の中心は実質的な金額審議が行われる小委員会です。審議は中央最低賃金審議会運営規定第6条によれば「原則として公開」のはずであり、非公開は例外的事例です。しかし例外的事例が、審議の中心的内容すべてに適用されています。これでは審議会は原則、非公開であるとしかいいようがありません。鳥取地方最低賃金審議会では専門部会も公開し、傍聴を認めていますが何ら問題があるとは聞いておりません。  

 ワーキングプアーや貧困が問題にされる中で、最低賃金引き上げは大きな社会的注目を集めています。最低賃金審議を公開し、大いに論争し、今日、要求されている最低賃金の水準、社会的に意味ある最低賃金制度とは何か、そのためには現行制度の何をあらためるべきか、などを発信していくことが求められています。審議を公開すれば、様々な意見が関係者からよせられ社会的関心も高まり、制度の改善にむけた社会的力も形成されるはずです。密室審議の時代は終わりつつあります。貧困が拡大し最低賃金の大幅引き上げが社会的には要求されている中で、審議の公開に耐えられないような委員は委員である資格にかけると考えます。審議の完全公開を強く要求します。

 

(4)京都地方最低賃金審議会で、ユニオンネットワーク・京都による意見表明を求める。

 

ユニオンネットワーク・京都は派遣、パート、アルバイトなどの有期雇用労働者や失業者、半失業者を組織する労働組合が参加しています。

彼らの賃金水準は極めて低く、その生活実態は極めて厳しいものです。有期雇用労働者や中小零細企業で働く労働者にとって、個別企業における賃金の引き上げは簡単ではありません。私たちは労働組合として、企業にたいして賃金引上げ要求はおこないますが、中小零細企業などでは賃上げ要求そのものが難しい場合があります。このような事情から私達は社会的規制としての最低賃金制度に注目し、地方最賃審議会の傍聴をおこない、意見書や異義申出書なども提出してきました。昨年、京都でも長年にわたる要求が認められ審議において意見表明がおこなわれました。

 これらのことから、低賃金で働く労働者の実態を踏まえた活動をおこなっているユニオンネットワーク・京都に、京都地方最賃審議会において直接意見を述べる機会を与えていただきますよう要請します。

                                以上